『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫|成長を目的としない社会へ
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更新日:3 日前

資本主義が終わってしまったら、社会主義になるの…?
社会主義の国って独裁政権だよね…?
なんて、物心ついた時から資本主義に生きていて、資本主義以外には社会主義しか知らなかったかつての私は、知人に「資本主義はいつか終わる」と言われた時に、そんな不安が込み上げてきたことを覚えています。
みなさんは、資本主義が終わると言われたら、どんなことを思い浮かべるでしょうか。
そもそも資本主義とは何なのでしょうか。
本書は改めて「資本主義とは何か?」を問い直し、成長と拡張を前提としたシステムの限界に私たちの目を向けさせます。
近年の金利回復は成長の兆しか?
本書では「利子率の長期低下」を軸に資本主義の構造的限界が論じられます。
近代資本主義は“フロンティア(外部)”の拡張によって成長してきましたが、地理的・金融的・時間的フロンティアが尽きたことで、利子率が徐々に低下し、お金を投資しても利潤を生み出す余地が縮小していると分析します。
ゼロ金利、金融緩和、格差拡大は偶発的現象ではなく、資本主義が成熟段階を越えた結果だというのです。そしてその現象の筆頭は日本であるといいます。
では、その「利子率の長期低下」傾向を確認するため、野村證券が整理した日本の100年の金利推移を見てみましょう。

長期的に見ると日本の金利は低下の一途を辿っており、1990年初頭の「失われた30年」と評される時代には、ゼロ金利どころかマイナス金利という局面さえ現実のものになりました。
本書の考えを適用すれば、お金を投資しても利潤を生み出す余地が長期的に縮小し続けていますので、確かに、日本の経済成長は成熟しているのではないかという予測が立ちます。
しかしながら、2020年以降金利は少しずつ上昇し、2026年時点では、2%〜2.5%の範囲で推移しています。その点を捉えると実はまだ成熟していないという期待も持てます。
このまま金利率が回復すれば、再び日本は経済成長を取り戻せるのでしょうか?
「資本主義の終焉と歴史の危機」|内容と魅力
本書の魅力は、ヨーロッパの「蒐集」の歴史を振り返り、資本主義の原動力が「蒐集」にあると鋭く指摘する点にあります。
資本主義は、お金を投じて利益を生み、その利益をさらに増やしていく仕組みですが、その原点には「誰かから奪い、それを自らの利益へと転換する」という発想があることを示しています。
当初はヨーロッパを中心として、外側(周辺)のすべてが「蒐集」の対象でしたが、資本主義の拡大とともに、資本主義に賛同したヨーロッパ以外の国々もまた、まだ誰も「蒐集」していない場所を見つけては自国に富を集め、豊かさを拡大してきました。
資本主義の性格は、時代によって、重商主義であったり、自由貿易主義であったり、帝国主義であったり、植民地主義であったりと変化してきました。IT技術が飛躍的に進歩し、金融の自由化が行き渡った21世紀は、グローバリゼーションこそが資本主義の動脈と言えるでしょう。しかし、どの時代であっても、資本主義の本質は「中心/周辺」と言う分割に基づいて、富やマネーを「周辺」から「蒐集」、「中心」に集中させることには変わりありません。
しかし、その「周辺」はほぼなくなったと本書は断言しています。
世界のほとんどが、すでに資本主義の枠組みに組み込まれ、新しいフロンティアは残っていないというのです。「蒐集」する外部がなければ、「資本主義」で利潤を生み続けることはできなくなります。
こうした立場から現在の金利上昇を見ると、それは「一時的な期待」であって「長期的な成長回復の兆し」と捉えることは難しくなります。
「奪い合う」から「支え合う」へ
このような状況下で、周辺が残されていない現代では、国内に「中心」と「周辺」を生み出すことで資本主義構造を維持しようとする、と述べられており、それは、国民間の経済格差の拡大を意味します。
そして、私たちは既にその格差は広がりを感じつつあるのではないでしょうか。
生活が苦しくなった人々は再分配を求めますが、低成長のもとで財政を拡大し続けることには限界があります。
負担が中流層に集中すれば、可処分所得は減り、消費も弱まり、経済は少しずつ縮んでいく。そうした悪循環も想定できます。
そうであれば、成長を待つのではなく、「豊かさとは何か」を考え直す視点が必要なのではないかと感じます。
私がそのヒントになりうると考えるのが「すべてをお金でやり取りしなくても成り立つ領域を、意識的に広げていく」という行為です。
それは限定的な贈与経済を指します。
贈与経済とは、単なる物々交換ではなく、「与える・受け取る・また返す」という支え合う関係の循環で成り立つ仕組みです。
国家や市場を否定するのではありません。
小さなコミュニティの中で、物や技術、時間を持ち寄り、生活の一部を支え合う。医療やインフラのような大きな仕組みは維持しながら、日常の一部を貨幣経済の外に置いてみる。
そうした試みが、拡張を前提としない社会のあり方を考える一歩になるのではないかと私は考えています。
まとめとおすすめ|こんな人に読んで欲しい
本書は現代の格差や低成長、金利動向を単なる経済現象としてではなく、歴史の流れの中で理解する手がかりを与えてくれます。目の前の景気循環に一喜一憂するのではなく、「拡張を前提とした仕組み」が今どこに立っているのかを考えさせる力があります。
こんな人におすすめ
金利や景気のニュースを、もう一段深い視点から理解したい人
なぜ格差が広がるのか、資本主義が終わるのか構造的に考えてみたい人
「成長」という言葉にどこか違和感を抱いている人
資本主義の次を単純に社会主義と結びつけたくない人
資本主義の先を創造したい人
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<執筆者>
水島由季菜|プロデューサー/脚本家
株式会社Protopia代表。ミュージカルの新しい形を探りながら、日々作品と真摯に向き合っています。
このブログでは、本や舞台をきっかけに「より良い未来」を考えるレビューをお届けします。


