『なぜ女は男のように自信を持てないのか』キャティー・ケイ&クレア・シップマン|女性が挑戦をためらう“知られざる壁”
- Yukina Mizushima
- 9月23日
- 読了時間: 6分
更新日:9月29日

「発言したいけど、間違えたらどうしよう」
「挑戦したいけれど、まだまだ完璧な状況とは言えない」
あなたが女性であれば、
そんなふうに考えて、一歩を踏み出せなかった経験はありませんか。
男性と女性の間に横たわるのは、能力の差ではなく“自信の差”かもしれません。
キャティー・ケイ&クレア・シップマン『なぜ女は男のように自信を持てないのか』は、数々の調査や実例をもとに、“自信の欠如”が女性のキャリアや人生にどれほど大きな影響を与えてきたかを明らかにします。
自己評価と実際の能力のギャップ
2025年にアメリカで実施された YouGov 調査では、男女の「自己評価の差」が顕著に表れています。
男性がほとんどの質問項目で「自分は平均以上/優れている」と感じる割合が女性より高く、
たとえば、知性を“平均以上”と答えた割合は男性63%、女性49%。
数学的能力では男性40%、女性25%とさらに差が広がります。
しかし、国際的な学力調査(OECD PISA など)や科学・数学の大規模テストでは、男女間に決定的な能力差は確認されていません。
つまり、「男性の方が優秀」というのは事実ではありません。
にもかかわらず、なぜ今日の社会では男性のほうが活躍しているように見えるのでしょうか。
もちろんそこには、努力では解消できない社会構造が生み出したジェンダー格差の問題もあります。
しかし、それだけではありません。自分の思考次第で解決できる“自信の差”が、未来の選択やキャリアの行方を大きく左右している可能性があります。
キャティー・ケイ&クレア・シップマン『なぜ女は男のように自信を持てないのか』の内容と魅力
本書を読み進めると、数々の調査や実例が示す「男女の自信の差」に驚かされます。
たとえば、昇進に挑戦する場面。
女性は「自分が100%その職務に適格だ」と思えない限り手を挙げないのに対し、男性は60%の準備でも挑戦に応じるといいます。
さらに心理学者のキャメロン・アンダーソンは「彼らがほんとうによくできるかどうかはそれほど関係ないんです」と言い、実際、彼らが昇進しても「能力がないことにネガティブな結果は出ない」と続けます。
また、別の調査では、ある数学のクラスの中盤で高度な過程に入ると、
男子学生たちは、そのハードルがあるがままに認識し、悪い成績を取っても「うわっ、この過程は難しいな」と反応し、
女性は「やっぱり、この過程でやっていけるほど私は優秀じゃなかった」と、自分の能力に疑いをかけるという反応を見せると言います。
このように、昇進や学習の現場など具体的なエピソードを挙げながら、なぜ女性はそう考えてしまうのかを、心理学、脳科学、遺伝子調査などの観点から解き明かします。
それが笑ってしまうくらい、本当に面白い!
私たちは“いい子すぎた”のかもしれない
私は女性の中では、自分に比較的自信を持っていると思っていました。
しかし、本書で自信を阻む要因として挙げられる
「 完璧主義」「正しさへの固執」「心配性」「考えすぎ」に、見事に当てはまっている自分に気づきました。
その結果、より良いキャリアをつかみ取るための行動を、自分自身の思考によって制限していることを思い知らされました。
そしてこれらの特性は自分だけのパーソナルな項目だと考えていましたが、多くの女性に当てはまる傾向であると知り、驚きが隠せませんでした。
なかでも最も関心を引いたのは、女の子の脳の成長と教育方針に関する指摘です。
実際、女の子の方が、早いうちから脳が感情のシグナルを拾うので、男の子よりも「いい子」になるのは簡単なのである。(…)そしていい子でいる自分を認めてもらいたいと思うようになる。
だが、その結果として、間違えることや危険を冒すことなど、自信をつけるために重要な行動を、女の子は避けるようになったのである。(…)女の子はその失敗が能力の欠如を表しているのだと思い込み、自分をダメな子だと受け止める傾向にあるという。
子どもがいい子になろうと努力することは、女性として完璧になろうとしてしまう癖につながる種を蒔いていると言える。(…)完璧主義は「充分」の敵である。
これは多くの女性が自信が持てない要因の一つだと考えられますが、ジェンダー格差社会を下支えする女性教育にもなっているとも考えられます。
私たち女性は、ジェンダー格差に苦しみながらも、
楽観的に高いキャリアを目指さず、
失敗を恐れて自らの挑戦に尻込みしてしまう
といったジェンダー格差解消を拒む考え方や行動を無意識のうちにしてしまっているのではないでしょうか。
つまり、ジェンダー格差は社会構造を作った男性だけではなく、女性自身が再生産してしまっている格差でもあると考えられます。
私が構想するミュージカル『最果てのミューズ』では、本書から得た知識を活かし、女性が少しでも行動を起こせるように、勇気と自信を与えるシーンを組み込みたいと考えています。
まとめとおすすめ|こんな人に読んでもらいたい
ジェンダー格差を論じるとき、男女の身体的特徴や脳の構造を持ち出すのはタブー視されがちです。なぜなら、それが文化的な格差ではなく「生物学的な前提」による差別を正当化してしまう危険があるからです。
しかし本書は、男女の脳やホルモンの違いを正直に受け止めながらも、それを“限界”ではなく“可能性”として扱い、現代社会で「どう女性がジェンダー格差の壁を乗り越えて成功を掴めるか」と言う問いにヒントを与えてくれます。
子どもを育てる親や教育現場に携わる人にとっても大切な視点を与えてくれるでしょう。
そして、女性は思考の持ち方ひとつでまだまだ活躍できるポテンシャルを秘めている――その事実に励まされる一冊です。
こんな人におすすめ
• 自分にもっと自信を持ちたい女性
• 女性部下にどう挑戦を促すか悩んでいる人
• 女の子を育てている親、女子教育に携わる人
• 女性活躍やジェンダー格差に関心のある人
※記事を読んでくださった皆さまに役立つ情報を届けるため、運営継続の一助としてアフィリエイトを利用しています。
<執筆者>
水島由季菜|プロデューサー/脚本家
株式会社Protopia代表。ミュージカルの新しい形を探りながら、日々作品と真摯に向き合っています。
このブログでは、本や舞台をきっかけに「より良い未来」を考えるレビューをお届けします。



