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The Review by Protopia は、
書籍をきっかけに「より良い未来」を考えていくレビュー・ブログです。
作品の背景や社会とのつながりを踏まえ、
読者が自由に選び、考え続けられる視点を届けます。
New:新着


『新自由主義の暴走』ビンヤミン・アッペルバウム|経済学者によって助長された貧富の差
家がもともと貧しいから。自分の能力が低いから。 あるいは、裕福な家に生まれたから。自分の能力が高いから。 そんな風に、貧富の差が広がる理由を考えたことはないでしょうか。 ですが、 貧富の差は、資本主義という制度を土台にしながら、 特に1970年代以降に広まった「新自由主義」という経済思想と政治によって 正当化され、拡大してきたものでした。 新自由主義とは 私たちの社会を根底から塗り替えた「新自由主義」とは、一体どのようなものでしょうか。 かつて経済には政府によって管理され、不正や不平等を阻止するための「規制」がありました。 しかし、新自由主義はそれを「非効率で邪魔もの」として切り捨てました。 「市場は常に正しく、自由にさせておけばすべてがうまくいく」 このシンプルな信仰が、一部の経済学者たちによって囁かれ、 それに呼応するように、政治家たちは国を管理するための経済規制を次々と取り払っていきました。 その結果、社会は資本を持つ者が「より自由に」儲けられる場所へと変貌を遂げます。 確かに「新自由主義」は、一時的に経済を活性化させ、国民の生活を底上げし
17 時間前


『世界一やさしいフェミニズム入門』山口真由|200年の歴史をコンパクトに
今でこそ「女性の権利」や「男女平等」という言葉は当たり前に聞きますが、 近代社会の成立と、女性の権利が奪われていく流れは深く結びついていました。 そんな時代に、女性の意識を大きく揺さぶったのがフランス革命です。 「自由・平等・博愛」というスローガンのもとで多くの人が人権を求めて立ち上がりましたが、 イギリスの思想家 メアリー・ウルストンクラフトは その「人」の中に“女性”が含まれていないことに気づき、声を上げました。 ここから、フェミニズムの約200年にわたる歴史が動き出します。 多様化するフェミニズムの現在 ただし、一口にフェミニズムと言っても、その時代や社会のあり方によって主張はさまざま。 現代ではむしろ、多様で一面的には語れない考え方として広がっています。 リベラル・フェミニズム 国家と家族が「公」と「私」に分けられたことで、女性が家庭に閉じ込められた構造を批判。 女性も「個人」として社会に参加し、生きる自由を保障されるべきだと訴える。 マルクス主義フェミニズム 家族と社会(市場)の分離によって、女性の家庭労働が無価値とされていることを問題
2025年10月15日


『中学生から知りたいパレスチナのこと』岡真里・小山哲・藤原辰史|“宗教対立”でなく“構造の暴力”として読む
ニュースでは「宗教対立」や「中東紛争」と語られ、 いかにも私たち日本人には理解しづらい、複雑で遠い問題のように見せかけられてきました。 しかし、本書ではその原因を”徹頭徹尾、ヨーロッパの問題”と断言します。 パレスチナ問題は、旧約聖書やクルアーンの時代にさかのぼって、イスラーム教徒とユダヤ教徒、アラブとユダヤの関係が……というような話にされ、中東地域で起きている中東の問題のようにされていますが、そうではありません。徹頭徹尾、ヨーロッパの問題がパレスチナに押し付けられているのです そして、“わかりにくさ”の正体―― 問題の原因を覆い隠してきた構造そのものを、鋭く、そして誰にでもわかる言葉で解き明かしていきます。 事実で見る「パレスチナ問題」の現在 国連人道問題調整事務所(OCHA)の報告によると、 2023年10月7日以降のガザ地区での死者数は3万5,000人以上(うち約7割が女性と子ども) に達しています。 これは、OCHAが2024年10月3日に発表した Humanitarian Situation Update #319: Gaza Stri
2025年10月10日
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『女性差別はどう作られてきたか』中村敏子|古代から続く“女は劣る”という思想
「うちは平等な家庭だ」と思っていても、 気づかぬうちに“家父長制”のルールに従っていませんか。 夫が外で稼ぎ、妻が家を守る。 決定権はいつの間にか男性の側に傾き、女性は「補助」の役割で男性のケアやサポートをする。 これは自然な役割ではなく、初めは平安時代に導入された中国の律令制度、次に明治時代に輸入された西洋の法概念とともに、徐々に社会制度として定着していった価値観です。 中村敏子『女性差別はどう作られてきたか』は、 西洋でつくられた男女差別の考え方や制度が、明治時代の日本にどう持ち込まれ、家庭や社会に根づいてきたのかをわかりやすく解説 しています。 家事・育児分担はまだ“女性の仕事” SDGs(持続可能な開発目標)の目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、無償の家事・ケア労働を認識・評価することが重要な課題とされています。 その具体的な指標が「5.4.1 無償の家事・ケア労働に費やす時間の割合(性別、年齢、場所別)」です。 総務省「社会生活基本調査」(2021年)の結果をこの指標に当てはめると、日本の現状が浮かび上がります。...
2025年9月29日


『なぜ女は男のように自信を持てないのか』キャティー・ケイ&クレア・シップマン|女性が挑戦をためらう“知られざる壁”
「発言したいけど、間違えたらどうしよう」 「挑戦したいけれど、まだまだ完璧な状況とは言えない」 あなたが女性であれば、 そんなふうに考えて、一歩を踏み出せなかった経験はありませんか。 男性と女性の間に横たわるのは、能力の差ではなく“自信の差”かもしれません。 キャティー・ケイ&クレア・シップマン『なぜ女は男のように自信を持てないのか』は、数々の調査や実例をもとに、 “自信の欠如”が女性のキャリアや人生にどれほど大きな影響を与えてきたかを明らかにします。 自己評価と実際の能力のギャップ 2025年にアメリカで実施された YouGov 調査 では、男女の「自己評価の差」が顕著に表れています。 男性がほとんどの質問項目で「自分は平均以上/優れている」と感じる割合が女性より高く 、 たとえば、 知性を“平均以上”と答えた割合は男性63%、女性49% 。 数学的能力では男性40%、女性25%とさらに差が広がります。 項目 男性 女性 知性(平均以上と回答) 63% 49% 数学的能力(平均以上と回答) 40% 25% しかし、国際的な学力調査(OECD P
2025年9月23日


『私がフェミニズムを知らなかった頃』小林エリコ|それは“個人の弱さ“ではなく“社会構造”
「女の子だから」「男の子なんだから」 幼い頃、気づけばそんな言葉に従ってきた自分はいませんか? 学校では、男子が先に名前を呼ばれ、女子は後ろに並ばされる。 家庭では、母親の背中を見て「女は家を守るもの」と刷り込まれる。 職場に出ても、女性の身体は“消費される存在”として扱われてしまう。 こうした積み重ねが、知らないうちに“あなたの当たり前”となり、思考そのものを縛っているかもしれません。 そんな「日常の中に染み込んだジェンダー格差」を告発し、フェミニズムに出会うまでの苦悩を赤裸々に綴ったのが、小林エリコ『私がフェミニズムを知らなかった頃』です。 学校や家庭など日常生活に潜む性別格差・性的消費 公益社団法人ガールスカウト日本連盟(会⻑:間奈々恵、以下「ガールスカウト⽇本連盟」)が、2024年に実施した『 中学生・高校生のジェンダーに関する意識調査2024 』報告書によると、 母親、そして学校の先生から性別を理由で何かをやらされた(期待された)り、制限されていると感じている中学生高校生が一定数いることがわかります。 また、性的嫌がらせを受
2025年9月19日


『母性』湊かなえ|母性という幻想と現実を描く、衝撃の社会派ミステリー
「母性」という言葉に、どんなイメージを持っていますか? それが母親に感じられなかったり、自分の子供に与えられずに悩んでいる人が多くいるように思います。 優しさ、無償の愛、全てを包み込んでくれる存在──。 けれどそれは本当に女性に備わった本能なのでしょうか。 湊かなえ『母性』は、母と娘という最も身近な関係を通して、私たちが信じてきた「母性本能」の正体を鋭くえぐり出す物語です。 現実の母親が抱える“言えない後悔” NHKが2022年に実施した調査 では、 母親の3人に1人が「母親にならなければよかった」と思った経験があると回答 しました。 その理由の多くは「私は良い母親になれない」という葛藤です。 「自分がいい母親でないと感じるから。ほかのお母さんをみているとすごいなと感心する」(30代) 「自分の思ういいお母さんにはなれなかった。もっと自分がしっかりしていたらとか考えてしまう。子どもがかわいそうだと思う事がしばしばある」(50代) これらの回答によりは、母となった女性たちが理想と現実の間で苦しめていることがわかります。 私たちに「もっと母性があれば
2025年9月15日


『信念に生きる―ネルソン・マンデラの行動哲学』リチャード・ステンゲル |集団で生きるすべをマンデラから学ぶ
「集団主義」と聞くと、同調圧力や息苦しさを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。空気を読んで黙ること、個人の意見を抑えること──そんなイメージが、日本では根強く残っています。 けれど 「集団主義」には、互いを支え合う「共生型」と、従わせてまとまろうとする「統制型」があります。 戦時を契機に日本では後者が刷り込まれ、その影響が今の社会にも影を落としています。 一方、 アフリカの思想 ウブントゥ が示すのは「共生型の集団主義」。 個を消すのではなく、互いの存在を通じて個を活かし合う考え方です 。 この本は、赦しと和解を選び抜いたネルソン・マンデラの行動哲学から、 「集団での生き方」を改めて問い直す一冊です。 ネルソン・マンデラの歩みと功績 ネルソン・マンデラ(1918–2013)は、南アフリカの人種隔離政策「アパルトヘイト」と闘い続けた人物です。 若くして弁護士として活動し、アフリカ民族会議(ANC)のリーダーとして反政府運動に参加。 国家反逆罪で逮捕され、27年もの長い獄中生活を送りました。 それでも「黒人と白人の融
2025年9月14日


『興亡の世界史 人類はどこへ行くのか』大塚柳太郎ほか|西洋史観を超えて、人類の歩みを問い直す
人口爆発、環境危機、宗教対立、民族紛争──。 近年はSDGsの浸透によって、 「社会課題はみんなで協力して解決していくものだ」という認識が 広く定着してきたように思います。 ですが、 私たちが「社会課題」だと信じてきたものは、 実は誰かの利益のために意図的に形づくられてきた側面があります。 『興亡の世界史 人類はどこへ行くのか』は、 各分野の研究者が人類の歴史を見直し、 100億人時代を生きる私たちに「新しい未来を選ぶためのヒント」を与えてくれる一冊です。 女性の自己実現と人口政策 女性にとって、仕事と結婚、出産・育児の両立は、人生を考える上で欠かせない要素です。 今でこそ私たちは、自分の選択によってライフステージを設計できるようになってきました。しかし かつて女性は、避妊はおろか、出産を拒むことを許されない時代を生きていました。 国が人口増加を目標に掲げていたからです。望まなくても子どもを産まなければならない──それが既婚女性の悩みでした。 その後、時代は変わり、世界は人口爆発を危惧するようになりました。...
2025年9月13日


『ぜんぶ運命だったんかい』笛美|“おじさん社会“でのジェンダー格差を暴く
気がつけば、おじさんたちの中でポツリと仕事をしていませんか? 決定権を握っているのはいつもおじさんで、 機嫌を伺いながら、必死に資料を説明している自分はいませんか? いつも飲み会では、率先しておじさんにお酌をしていませんか? それ、もしかしたら“おじさん社会”に洗脳されているのかもしれません。 そんな「おじさん社会」の実態を、涙と笑いで描き出したのが笛美さんのエッセイ『ぜんぶ運命だったんかい』―おじさん社会と女子の一生―です。 本題に入る前に──セクハラという概念 「セクシャルハラスメント」という言葉は1980年代、女性学やフェミニズムが社会に訴える中で明確になった概念 です。 それ以前は、女性が職場で性的なハラスメントを受けても「仕方がない」「働く上で当たり前」とされてきました。 さらに、女性がそれを拒めないことで男性客が集まり、利益が生まれ、結果的に女性の雇用が拡大するという、歪んだ構造すら存在していました。 この歴史を踏まえると、 今の私たちが「仕事だから仕方がない」「できる女性の振る舞い」と信じていることの中にも、まだ
2025年9月11日


『お姫様とジェンダー』若桑みどり|ディズニー童話に潜む“無意識の刷り込み”
辛い日々も辛抱していれば、いつか白馬の王子様が私を見つけくれて、幸せな結婚ができるはず!これまで多く女性が、それこそが自分の幸せだと、憧れてきました。 けれど、よく考えてみてください。 イケメンでお金持ちで誠実な理想の王子様のような男性が、ひたむきに頑張っている自分を“見つけてくれる”可能性なんて、現実にはほんの一握りしかありません。にもかかわらず、なぜ多くの女性が「絵に描いたような理想の男性との結婚こそが幸せ」と思い込んでしまったのでしょうか。 その答えの一端は、私たちが幼少期に見てきたディズニープリンセス物語にありました。 幼少期から刷り込まれたディズニープリンセス物語 私たち、特に20代後半以降の女性たちが幼いころから親しんできたディズニー映画を振り返ってみましょう。 『白雪姫』(1937) 『シンデレラ』(1950) 『眠れる森の美女』(1959) 『リトル・マーメイド』(1989) 『美女と野獣』(1991) 『アラジン』(1992) どれも夢のある素晴らしい作品ですが、 その結末は王子様との「結婚」、あるいは「結婚が約束されること
2025年9月10日

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